「休職中なのに、上司からLINEが来て気が休まらない」「復職したばかりなのに、また深夜まで働かされそうで怖い」――そんな不安を抱えている方に、ぜひ読んでいただきたい記事です。2026年、約40年ぶりとなる労働基準法の大改正が実施される予定です。この改正には、休職中・復職後の方の生活に直接関わる重要な変更が数多く含まれています。この記事では、あなた自身が「知っておくべき権利」と「会社に対して主張できること」を、できるだけわかりやすくお伝えします。
労基法改正2026:休職者・復職者に関わる改正の全体像
📋 約40年ぶりの大改正、その背景
労働基準法は1987年の大改正以来、その骨格がほとんど変わっていませんでした。しかし、リモートワークの普及・スマートフォンによる「常時接続」の常態化・メンタルヘルス不調者の増加など、現代の働き方は当時とは大きく変わっています。厚生労働省は2025年に改正案を国会に提出し、2026年4月からの施行を目指して審議が進んでいます。
改正の3つの柱
「つながらない権利」に関するガイドライン策定 — 勤務時間外の業務連絡に応じなくてよい権利
連続勤務の上限規制(最大14日) — 際限ない連続勤務に歯止め
勤務間インターバル制度の義務化(11時間以上) — 退勤から出勤まで最低11時間の休息を確保
厚生労働省「令和5年(2023年)患者調査」によれば、うつ病・躁うつ病の総患者数は約172万人。「令和5年度 労働安全衛生調査(実態調査)」では、メンタルヘルス上の理由による休職者がいた事業所の割合は13.4%に達しています。
「つながらない権利」と休職者:勤務時間外の連絡問題に終止符を
💡 つながらない権利(Right to Disconnect)とは
勤務時間外に会社や上司からの連絡に応じなくてよい権利のことです。フランスでは2017年にすでに法制化されており、EU全体でも広がりを見せています。日本でも今回の改正で、この権利に関するガイドラインが策定される予定です。
休職者が直面する「連絡問題」
休職中の方が最も困るのが、「休んでいるのに連絡が来る」という問題です。
上司から「ちょっと確認したいことがある」とLINEが届く
「引き継ぎ資料だけ作ってほしい」と頼まれる
同僚から「あなたの担当の件、どうすれば?」と相談が来る
こうした連絡は善意から来るものも多いですが、休職者の回復を妨げる大きなストレス要因になります。今回のガイドライン策定により、会社は「休職中の従業員への連絡ルール」を明確に定めることが求められるようになります。
✅ 今すぐできること:休職中の連絡対応を整理しよう
主治医や産業医に相談し、「連絡対応が療養に支障をきたしている」という意見書を書いてもらう
人事担当者に「休職中の連絡は人事部に一元化してほしい」と申し出る
就業規則や休職規程に「休職中の業務連絡禁止」の記載があるか確認する
2026年の改正後は、こうした申し出が「法的根拠のある要求」として、より受け入れられやすくなります。
休職中のお金や生活の不安も大きな問題です。詳しくは → 休職中のお金の不安を解消|傷病手当金と使える制度
勤務間インターバル義務化:復職後の「無理な働き方」を断れる
⏰ 勤務間インターバルとは
退勤から次の出勤までの間に、一定時間以上の休息を確保する制度です。11時間のインターバルが義務化されると、夜10時まで働いた場合、翌朝9時より前に出勤させることはできなくなります。2026年の改正では、中小企業を含む全事業主への義務化が審議されています。
復職者への影響
復職直後は、体力・集中力ともに万全ではありません。それにもかかわらず、「早朝会議があるから8時に来て」「昨日は残業したけど明日も定時出勤で」といった状況に追い込まれてしまうケースがあります。勤務間インターバルが義務化されれば、「11時間の休息が確保できないシフトは違法」という明確な根拠が生まれます。
🔧 活用のポイント
復職時の「職場復帰支援プラン」に、勤務間インターバルの確保を明記してもらう
産業医との面談で「インターバル遵守」を復職条件の一つとして確認する
万が一違反が続く場合は、労働基準監督署への相談も選択肢に入れる
復職後の再休職を防ぐための具体策はこちら → 復職失敗・再休職を防ぐには?「焦り」を手放す3つのポイント
連続勤務14日上限:「休めない職場」に歯止め
| 項目 | 現行制度 | 改正後 |
| 連続勤務の上限 | 最大12日(条件付き) | 最大14日(原則禁止) |
| 勤務間インターバル | 努力義務(大企業中心) | 11時間義務化(全事業主) |
| つながらない権利 | 規定なし | ガイドライン策定 |
復職後の無理のない働き方を計画するには → 職場復帰支援プランとは?無理なく復職するための具体的な進め方
メンタルヘルスへの影響
厚生労働省「令和5年度 労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、強いストレスを感じている労働者の割合は82.7%に上ります。長期連続勤務は、睡眠の質の低下・自律神経の乱れ・判断力の低下を引き起こし、回復途上にある復職者には特に大きなダメージとなります。復職後に「また休日なく働かされる」状況が続けば、再休職のリスクが高まります。
「治療と就業の両立支援」の義務化:復職者が使える新しいサポート
2026年改正のもう一つの柱として、事業主による「治療と就業の両立支援」の義務化があります。これまでは「会社の好意」や「担当者の裁量」に依存していた部分が、法的義務として明確になります。
復職支援プランの作成と提供
時短勤務・テレワークなど柔軟な就労形態の検討
産業医・保健師との連携体制の整備
主治医との情報共有に関する手続きの明確化
☑ 復職者が会社に求めてよいこと
☑ 復職後の業務内容・勤務時間の段階的な調整
☑ 定期的な産業医面談の実施
☑ 主治医の指示に基づく就業制限の遵守
☑ 職場内での配慮事項の共有(本人の同意のもとで)
☑ 再発時の対応フローの事前確認
「治療と就業の両立支援」制度の詳細はこちら → 治療と就業の両立支援とは?2026年4月施行の新制度を休職者向けに解説
権利を「使う」ための具体的な行動ステップ
法律が変わっても、知らなければ使えません。また、知っていても「言いにくい」「嫌われそう」と感じて声を上げられない方も多いです。実際に権利を活用するための行動ステップをご紹介します。
ステップ1:自分の状況を整理する
・休職の理由・診断名
・現在の主治医・産業医との関係
・会社の就業規則・休職規程の内容
・復職の目標時期
ステップ2:専門家を味方につける
主治医・精神科医 — 就労可否・就業制限の意見書を作成してもらえる
産業医 — 職場と本人の間に立って調整してくれる
社会保険労務士(社労士) — 労働法の専門家として会社との交渉をサポート
労働基準監督署 — 法律違反が疑われる場合の相談窓口(無料)
総合労働相談コーナー — 厚生労働省が全国に設置する無料相談窓口
ステップ3:記録を残す習慣をつける
権利を主張する際に最も重要なのが「記録」です。
・休職中に届いた業務連絡のスクリーンショット
・勤務時間・休日の記録(タイムカードのコピーなど)
・会社とのやり取りのメール・チャット履歴
・産業医・上司との面談内容のメモ(日時・場所・内容)
休職・復職に関わるお金と制度の全体像はこちら → 休職中のお金の不安を解消。傷病手当金など使える制度
まとめ:2026年改正で変わる「働く人の権利」
「つながらない権利」のガイドライン策定により、休職中の不要な業務連絡を断る根拠が生まれる
勤務間インターバル11時間の義務化により、復職後の無理な出勤スケジュールを断れるようになる
連続勤務14日上限の明確化により、際限ない連続勤務に歯止めがかかる
治療と就業の両立支援の義務化により、会社に復職支援を「権利として要求」できるようになる
法律は、知っている人だけが使えるものです。今から少しずつ情報を集め、自分の権利を守る準備をしておきましょう。あなたが安心して回復し、自分らしく働き続けられる環境は、必ず作ることができます。
※本記事の法改正情報は、2025年5月時点での審議・報道内容をもとに作成しています。改正内容は審議の進捗により変更される可能性があります。施行内容の詳細は、厚生労働省の公式発表を必ずご確認ください。統計データの出典:厚生労働省「令和5年(2023年)患者調査」・「令和5年度 労働安全衛生調査(実態調査)」

